第2回:子供の頃の常識は大人になっても常識ではない
子供の頃は「借金は危険なことである」との教育を受けると思います。
子供にとって「借金は危険なことである」というルールは妥当性を持ちます。
これは、子供が大抵の場合には消費者であって、経営者や投資家ではないからですね。消費者としての子供にとっては借金は危険な場合があるということです。
また、借金が危険であるという教師自体、生まれてこの方、給料を「もらった」経験はあっても、自分で事業や投資で「稼いだ」経験がないため、借金が危険なものであると、心底思っているのでしょうね。
この子供の頃に教えられたマネー教育を大人になった今でも当てはまる常識だと信じている人のなんと多いことか。
ところが、一旦事業経営を始めるとなると、運転資金、設備資金と借金をして事業を展開していかないと財務レバレッジはきいてきませんし、投資の場合であっても、自己資金(エクイティ)に借り入れ金(デット)を加えてレバレッジを利かせられないと、自己資金だけでは有効な投資はできません。
つまり、借金自体は、その調達コストを上回る収益をあげられる限りにおいては、何の問題も無いばかりか、事業経営、投資活動においては必要な、
「借金それ自体は、善でも悪でもなくニュートラルな存在」
な訳です。
ところが、与えられた給料を貰うばかりで、自分で稼いだことのない教師達による悪しきマネー教育が子供時代に施された結果、子供の価値観の中には「借金は悪である」という価値観がこびりついてしまっているのです。
学校の教師は、確かに学問に関しては専門家かもしれません。人格的にも優れた教育者であるかもしれません。
そのこと自体は僕も否定するつもりはありません。
しかし、マネーリテラシーにおいては、学校の授業参観に来ている中小企業のオヤジさんのほうが何倍も優れているケースも多いのです。
心理学の用語でハロー効果というものがあります。
ハロー効果とは、エドワード・L・ソーンダイクという心理学者の実証的研究で明らかにされた心理学的な効果で、ある対象の顕著な特徴に影響されて、他の特徴についての評価が歪められる現象のことを言います。
例えば、学校の先生が物知りであることをもって、人格的に優れているとか、マネーリテラシーにおいても先生のいうことが正しいと評価してしまう誤認などは、ハロー効果に振りまわされた結果です。
物知りであることと、マネーリテラシーがあることとの間には何の関連性もありません。「何を言ったか」ではなく、「誰が言ったか」に注意を向ける人間の何と多いことか。
学校の先生は、マネーリテラシーにおいては、素人です。それは、いくらご本人が「自分は経済観念が発達しているんだ」と主張しようとも、皮肉にも学校の先生の経済状態そのものが証明しています。
そんな学校の先生に教育を受けた子供が大人になる訳ですから「札束に火をつけて燃やすことの大切さは理解できたけれど、怖くて実行できない」といった状態の一種の脅迫観念が植え付けられてしまっていて、頭では分かっていても、借金をしての事業投資への過剰な危険回避行動をとる大人が出来あがってしまうのでしょうね。